a社長「先生、この前採用した人、もう辞めちゃったんですよね。」
b税理士「どうして辞めたんですか?」
a社長「多分、給料が安かったんじゃないかなと思います。」
b税理士「理由を聞いてみましたか?」
a社長「いや、辞める人に理由を聞いても建前しか言わないですし、本当の理由なんて教えてくれないですよ。」
b税理士「確かに、退職理由を聞いても本音を話さないケースは多いですね。でも、離職防止には本当の理由を知ることが重要です。本音を引き出すためには、タイミングと聞き方がポイントなんですよ。」
離職防止のために、退職理由を探ることは非常に重要です。しかし、表面的な理由だけでは企業が抱える根本的な問題にたどり着けないことが多いです。この記事では、どのようにして従業員から本当の退職理由を引き出し、どのような対策を講じるべきかを具体的に解説します。また、離職防止の成功事例やツールも紹介します。
1.離職理由の重要性
従業員が辞めてしまう原因は多岐にわたりますが、表面的な理由を鵜呑みにするのは危険です。「給料が低い」といった理由であっても、実は職場環境や人間関係が本当の原因であることが多いのです。正しいタイミングと方法でヒアリングを行うことが、真の退職離職理由を知る鍵です。
真の離職理由を理解することで、職場環境の改善すべき点や経営側の課題を浮き彫りにすることができます。これは、離職を未然に防ぎ、従業員の定着率を高めるために不可欠なプロセスです。
どのタイミングで、どのようにヒアリングすれば本音が引き出せるのか?
本音を引き出すためには、退職が決まった後のタイミングや面談の方法が重要です。
以下のポイントを押さえたヒアリングが効果的です。
・ヒアリングのタイミング
退職が決まってすぐではなく、退職者の最終出社日や、可能であれば退職して一定期間が経過してからのインタビューが有効です。
退職が決まった直後では、退職者の感情が落ち着いていないこと、まだ出社日が残っていることなどから本当の退職理由を話してくれません。
・信頼できる第三者によるヒアリング
直属の上司や経営層ではなく、信頼できる第三者がヒアリングを行うことで、従業員はより率直な意見を述べやすくなります。
・離職防止の効果的なアプローチ
従業員の真の離職理由を知ることによって、会社が抱える根本的な問題や課題を把握でき、それに基づく改善策を講じることで、従業員の定着率を高めることができます。
従業員との対話を通じて職場環境を整えることが、離職防止の最も効果的なアプローチとなります。
2.離職防止対策をしないリスク
離職防止策を講じない場合、企業には様々なリスクが生じます。まず、頻繁な離職は業務に大きな支障をきたし、残された従業員に過度な負担がかかることになります。このような状態が続くと、業務効率が低下し、生産性が著しく損なわれ、最終的には売上や利益にも悪影響を及ぼすでしょう。さらに、社内のモラルや士気も低下し、残った従業員のやる気が失われ、次々と離職者が増える負のスパイラルに陥る可能性があります。
加えて、離職が増加すると採用コストも大幅に増加します。求人広告費用、採用面接にかかる時間、そして新入社員のトレーニングなど、採用にかかる時間と費用は無視できません。また、経験を積んだ従業員が退職する場合、その知識やスキルの蓄積が失われ、業務の効率性やクオリティが低下する恐れがあります。即戦力の新しい人材を採用することができたとしても、その人材が企業文化に馴染むまでには時間がかかり、結果としてさらなる時間とコストがかかるでしょう。
さらに、離職が続くことは、企業の外部イメージにも悪影響を与えます。特に、口コミサイトやSNSが発達した現代では、従業員の離職理由が外部に漏れたり、不満が共有されたりすることで、企業の評判が傷つきます。「働きづらい職場」という悪評が広がると、優秀な人材が応募を避けるようになり、採用活動が一層難航します。また、顧客に対しても信頼感を失うリスクがあり、取引先やクライアントに対しても不信感を抱かれることがあるかもしれません。
このように、離職を防止しないことで発生するリスクは多岐にわたり、企業の存続や成長に深刻な影響を与える可能性があります。人材の流動性が高まる現代において、従業員を定着させるための取り組みは企業にとってますます重要となっているのです。
3.離職防止策のポイント
・職場環境の改善
従業員が働きやすい環境を整えることが、離職防止の基本となります。職場の物理的な環境だけでなく、人間関係や仕事の負担なども含まれます。社員間のコミュニケーションを促進する空間や場を提供することで、ストレスを軽減し、働きやすい職場作りを進めましょう。チームビルディングイベントや定期的な1on1ミーティングを通じて、人間関係の改善を図ることも有効です。
・キャリアパスの提示
従業員が自身の将来に対して不安を抱かないように、明確なキャリアパスを示すことが大切です。従業員一人ひとりに適したキャリアアップの機会を提供し、評価基準や昇進の条件を明確にしましょう。また、定期的なフィードバックや目標設定を行うことで、従業員が成長を実感し、モチベーションを維持できるようにサポートします。
・福利厚生の充実
福利厚生の拡充も、離職防止に効果的です。例えば、健康診断やメンタルヘルスケアの導入、柔軟な勤務体系やリモートワークの推進など、従業員のワークライフバランスを重視する福利厚生が求められています。これにより、従業員が会社に対して安心感を持ち、働き続けるモチベーションを高めることができます。
・研修制度の充実
スキルアップや自己成長の機会があることは、従業員の満足度を高める要因の一つです。従業員が自身のスキルを向上させるための研修プログラムを提供し、自己啓発をサポートすることで、長期的に会社に貢献したいと感じさせることができます。外部講師を招いた研修や資格取得支援制度なども積極的に取り入れましょう。
・フィードバックと評価制度の改善
従業員が自分の仕事に対して適切に評価されていると感じることは、離職防止に重要です。透明性の高い評価制度を導入し、定期的なフィードバックを行うことで、従業員の成長と会社への貢献をしっかりと認識し合うことが大切です。評価の基準を明確にし、公平な評価を行うことが信頼を生み、定着率向上に繋がります。
・ワークライフバランスの推進
従業員のワークライフバランスを重視する取り組みは、離職防止の重要な要素です。特に、長時間労働や休日出勤が常態化している場合、仕事とプライベートの両立が困難となり、離職を招きます。フレックスタイムやテレワーク制度、育児・介護休暇の拡充を進め、従業員が柔軟に働ける環境を提供しましょう。
・マネジメントスキルの向上
管理職のスキル向上も、離職防止に大きく貢献します。優れたリーダーシップやコーチングスキルを持つ上司がいることで、従業員は信頼感を持ち、安心して働くことができます。管理職に対しては、適切なコミュニケーションやモチベーション管理の研修を行い、部下のサポート能力を高めましょう。
4.離職防止の具体的事例
社員の定着率向上や離職防止は、多くの企業にとって重要な課題です。ここでは、職員の定着率向上に成功した具体的な事例を2つご紹介し、効果的な対策や注意点について解説します。
4.1社会福祉法人翼福祉会 草薙ふたばこども園の事例
柔軟な育児支援制度と複数担任制による離職防止
草薙ふたばこども園では、職員が働き続けやすい環境を整えるため、以下の取り組みを行っています。
・出産・育児支援制度の整備
短時間勤務制度や不妊治療休暇を導入し、育児や家庭生活との両立を支援。
職員は育児休業後、固定時間勤務か短時間勤務を選べるため、柔軟な働き方が可能です。
・複数担任制の導入
保育教諭の負担軽減のため、複数担任制を導入。
チームでの保育体制を整備することで、新人職員も安心して業務に取り組める環境を実現しています。
・職場環境の改善と人間関係の構築
職員が相談しやすい環境を作るため、年2回の賞与支給時に園長と面接を行い、自己評価や悩みを共有。
また、園長とのコミュニケーションを大切にし、風通しの良い職場環境を目指しています。
効果
・職員定着率の向上
育児休業の取得率は100%で、復職後も柔軟な働き方が選べるため、90%以上の職員が結婚・出産後も継続勤務。平均勤続年数は11年に達しています。
・離職率の低下
育児支援制度や複数担任制により、離職防止に大きく貢献しています。
注意点
制度が導入されて終わりではなく、定期的な改善が必要です。特に、新規採用者が職場に早く慣れるための継続的なサポートが重要です。
社会福祉法人翼福祉会 草薙ふたばこども園 | 働き方改革特設サイト | 厚生労働省 (mhlw.go.jp)
4.2株式会社トーリツの事例
多様な勤務シフト制度とテレワーク導入による離職防止
介護業界で働く社員の離職防止策として、株式会社トーリツでは以下のような取り組みを実施しています。
・多様な勤務シフト制度の導入
子連れ・孫連れ出勤制度や社内保育制度、スライド出勤制度など、社員のライフステージに応じた多様なシフト制度を整備。
これにより、社員は自分の生活に合わせた働き方を選べます。
社員の声を反映し、家庭環境や介護に対応できるシステムを構築。
・テレワークの導入
介護業界では一般的でなかったテレワークを導入し、ケアプラン作成などの業務効率を大幅に改善。
これにより、社員間のコミュニケーションも円滑になり、業務計画の調整が容易になりました。
効果
・育児休業後の復職率100%:多様なシフト制度とテレワークの導入により、女性社員の復職率が向上し、男性社員の育児休業取得も進んでいます。
・勤続年数の延長:柔軟な働き方の提供により、平均勤続年数が6年2カ月から8年8カ月へと延長。離職率の低下に成功しています。
・業務効率の向上:テレワークの導入により、業務の柔軟性が高まり、業務効率も向上しました。
注意点
制度を公平に整備し、全社員が利用できる環境を整えることが必要です。社員のニーズを定期的に聞き、新たな制度の検討や導入も欠かせません。
株式会社トーリツ | 働き方改革特設サイト | 厚生労働省 (mhlw.go.jp)
*まとめ
紹介した2つの事例では、柔軟な育児支援制度や多様な勤務シフト制度が、社員の定着率向上や離職防止に大きな効果を発揮しています。これらの事例を参考に、自社の課題に応じた取り組みを進めていくことで、働きやすい環境を整えることができます。
5.離職防止の究極の形?~進化型組織デザインプログラム『DXO』~
社員の離職は、企業の成長や持続可能性に大きな影響を与えます。
離職防止策を強化するために、企業は従来の枠にとらわれない新しいアプローチを模索しています。
ここで注目したいのが、進化型組織デザインプログラム『DXO』です。
DXOは、透明性や分散型意思決定、個々の主体性を尊重することで、離職のリスクを根本から改善する究極の形と考えられます。
以下、DXOの理念とその離職防止効果について探っていきます。
・個々の主体性を尊重する柔軟な組織運営
DXOの基本理念には、**「管理しない経営」**があります。これは、個々の社員が自主的に動ける環境を提供することです。管理者が一方的に指示するのではなく、社員が自ら考え、行動できる柔軟な体制が整備されます。これにより、社員は自分の仕事に対する自主性と責任感を高め、結果として職場への忠誠心が強まり、離職防止に直結します。
・分散型意思決定で社員のエンゲージメントを高める
離職の大きな原因の一つは、社員が意思決定プロセスに関与できないことです。DXOでは、分散型意思決定が導入されており、社員が積極的に組織の運営に関わることができます。これにより、社員は自身の役割に対する責任感とやりがいを感じやすくなり、組織への帰属意識が高まります。意思決定に参加することで、社員は「自分の意見が尊重されている」と感じ、離職の動機を大幅に減少させることができます。
・透明性と情報共有が生む信頼
DXOの最も重要な要素の一つは、情報の透明化です。組織内の情報が透明であれば、社員は自分が何のために働いているのか、どのような方向性に進んでいるのかを理解しやすくなります。これは、離職を防ぐために極めて効果的です。社員は組織への信頼を深め、安心感を持って長く働くモチベーションが維持されます。DXOは、情報が一部の管理職に集約されるのではなく、すべての社員に共有される仕組みを提供します。
・コミュニティを強化し、信頼関係を構築する
社員同士の信頼関係を構築することも、離職防止において重要なポイントです。DXOでは、社員同士が日常的に意見を交わし合うコミュニケーションの場が強調されています。特に、雑談や気軽な相談ができるような雰囲気が醸成されることで、社員同士の絆が深まり、孤立感がなくなります。これにより、職場の雰囲気が良好になり、社員が長く働き続けたいと思える環境が整います。
・デジタル技術の活用でストレスを軽減
DXOでは、デジタル技術の積極的な活用が推奨されています。業務の効率化や、リモートワークなど柔軟な働き方が促進され、社員がストレスを感じずに働ける環境が整います。例えば、リアルタイムでの情報共有ツールや自動化された業務フローは、社員の負担を軽減し、仕事のストレスやフラストレーションを抑える効果があります。これにより、過労やストレスによる離職を未然に防ぐことができます。
・継続的な改善と進化で社員の成長を促進
DXOの最大の特徴は、組織が常に進化し続ける点にあります。これは、社員が自己成長を感じながら働くことができる環境を提供することを意味します。社員が成長を実感できる職場は、長期的なモチベーションの維持に繋がり、離職防止において非常に効果的です。DXOは、組織全体が進化を続けることで、社員の成長意欲を常に引き出します。
結論:DXOがもたらす究極の離職防止策
進化型組織デザインプログラム『DXO』は、単なる離職防止策の枠を超えた、組織全体の進化を目指すアプローチです。透明性、分散型意思決定、個々の主体性、テクノロジーの活用、コミュニティの強化、そして継続的な進化という要素が組み合わさることで、社員は会社に対して深い信頼感と愛着を持ち、長期的に働きたいと思うようになります。離職防止の究極の形を探している企業にとって、DXOはその答えとなるかもしれません。
6.まとめ
離職者が語る退職理由は建前に過ぎず、真の理由を聞き出すことは容易ではありません。
しかし、適切なヒアリングのタイミングや方法を工夫すれば、本当の理由にたどり着くことができます。
本当の離職理由を知ることで、会社の真の課題が明らかになり、改善すべきポイントが浮き彫りになります。
この課題に応じた適切な離職防止策を導入することで、従業員の満足度が向上し、結果として離職率の低下が期待できます。
社員にとって居心地の良い環境が生まれることで、会社の生産性も向上し、業績のアップにつながります。
こうした好循環を築くことで、会社の永続的な成長と存続が確立されるのです。
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